電子処方箋の導入補助金の締切が近づいています。補助金申請の締切は令和9年3月末なのですが、「令和8年(2026年)9月末までに導入を完了すること」が補助の条件になっています。つまり9月末までにシステムが稼働していなければ、補助の対象になりません。
そしてもう一つ重要なポイントが、薬局については今回の補助が最後だと国がはっきり示している点です。今回は、補助金の中身と、今から導入期限を逆算してどう動くべきかを整理します。
なお、すでに電子処方箋を導入済みの施設は、今回の締切や補助を気にする必要はありません。これから新規導入を検討する医療機関に向けた内容です。
※本記事の数字や制度の内容は、2026年7月14日に開催された厚生労働省のオンライン説明会の資料に基づいています(アーカイブ動画へのリンクは記事末尾)。
補助金の内容
電子処方箋の導入補助は、オンライン資格確認と同じ「医療情報化支援基金(ICT基金)」を財源とする国の補助制度です。レセコンや電子カルテの改修費など、電子処方箋の導入にかかる費用の一部が補助されます。令和7年10月以降に導入した施設の補助額は次のとおりです。
| 区分 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 大規模病院(200床以上) | 200.7万円 | 事業額602.2万円を上限にその1/3 |
| 病院 | 135.3万円 | 事業額405.9万円を上限にその1/3 |
| 診療所 | 27.1万円 | 事業額54.2万円を上限にその1/2 |
| 薬局(大型チェーン薬局を除く) | 27.7万円 | 事業額55.3万円を上限にその1/2 |
| 大型チェーン薬局 (グループで処方箋受付が月4万回以上) | 13.8万円 | 事業額55.3万円を上限にその1/4 |
表の「事業額○○万円を上限にその1/2(または1/3・1/4)」は、導入にかかった費用のうち決められた割合を、上限額まで補助するという意味です。たとえば診療所が導入に50万円かけた場合、その1/2の25万円が補助され、自己負担は残りの25万円。かかった費用の総額が54.2万円を超えても、補助されるのは上限の27.1万円までで、それ以上は自己負担になります。導入費用が安く済めばその分補助額も下がります。
今回の補助では、従来の院外処方機能に加えて院内処方機能も補助対象に追加されました。院内処方機能まで含めて導入する場合は上限がさらに引き上がります(例:診療所35.9万円、薬局30.2万円)。
※補助対象の詳細な条件や申請方法は、医療機関等向け総合ポータルサイトをご確認ください。
「9月末までの導入完了」が条件
この補助金は「令和8年9月までに導入した施設」が対象です。申請の受付期限はその後に設定されているため、「申請はまだ先だから大丈夫」と考えていると、導入完了期限に間に合わない可能性がありますので十分注意が必要です。
そして、電子処方箋は「申し込んだらすぐ使える」ものではありません。
導入の意思があるのであれば、まずは利用しているシステムベンダーに相談することをおすすめします。
✔️ 必要な準備やポイント
- ベンダーのシステム改修スケジュール:今から9月末までの期間は駆け込みの依頼が集中し、対応枠が埋まってしまうことが想定されます。訪問作業が必要な場合、希望する日程に作業してもらえない可能性も。
- HPKIカードの発行申請・取得:HPKIカードとは、電子処方箋の電子署名に使う医師・薬剤師の電子的な資格証明カードです。申請から発行まで日数がかかります。半導体不足の影響で発行までに数ヶ月かかったという話も聞いていますので早めに準備を始めてください。
- ポータルサイトでの利用申請:ポータルサイトから電子処方箋利用開始の申請が必要。
- マスタの整備:電子処方箋を利用するにあたって、レセコン・電子カルテで使用している医薬品マスタや用法マスタの見直しが必要な場合があります。点検項目や点検方法はシステムベンダーに確認。
- 院内の運用準備:運用フローの確認やスタッフへの説明など。
よくある誤解なのですが、HPKIカードの到着待ちのためにシステム改修をベンダーに発注をしていないケースがあります。
HPKIカードが必要なのは完全な電子処方箋を発行する場合です。カードが届くまでは従来どおり紙の処方箋(引換番号付き)を発行しながら、重複投薬チェックや薬剤情報の閲覧といった機能を先に使い始め、カードが届いてから完全な電子処方箋へ移行するといった段階的な導入の進め方が可能ですし、厚労省の説明会でも公式に案内されています。
薬局は今回の補助が最後
この方針は令和7年10月2日の厚生労働省の事務連絡で示され、7月14日の説明会資料でも「薬局における補助対象とする導入期限は、令和8年9月までの延長が最後となります」と、改めてはっきり明示されました。
理由は、すでに概ねすべての薬局への導入が見込まれているためです。未導入の薬局にとっては、国の補助を受けて導入できる最後の機会です。
一方、医科(病院・診療所)の令和8年10月以降の補助は「電子カルテ/共有サービスの普及計画を踏まえて改めて検討」とされています。補助が完全になくなるとは限りませんが、条件や金額が今と同じである保証もありません。「今の条件で確実に補助を受けられるのは9月末までの導入」と理解しておくのが安全です。
補助金だけではない|令和8年度診療報酬改定でも評価
令和8年度の診療報酬改定では、電子処方箋の発行体制や調剤結果の登録体制が、加算の算定要件に位置づけられました。
- 医科:電子的診療情報連携体制整備加算(初診時4〜15点、再診時2点。※電子処方箋を発行する体制の有無などで変わる)
- 歯科:電子的歯科診療情報連携体制整備加算(4点・9点)
- 薬局:電子的調剤情報連携体制整備加算(8点)
いずれも初診時や調剤時に月1回の算定で、マイナ保険証の利用率30%以上といった施設基準があります。細かい施設基準にはここでは踏み込みませんが、今回の診療報酬改定でも電子処方箋導入が評価されるようになりました。逆に言えば、高い加算を算定するには電子処方箋の導入がほぼ必須になります。
電子処方箋は「あって当たり前」になっていくのか
「補助金があるうちに入れるべきか、まだ様子見でいいのか」気になるところではないでしょうか。
正直にお伝えすると、電子処方箋はオンライン資格確認と違って、現時点で導入が義務化されているわけではありません。ただ、私はオンライン資格確認と同じ道をたどる可能性が高いと思っています。
薬局の電子処方箋導入率は90.6%、運用準備中を含めると93.1%(2026年7月5日時点)。調剤結果の登録率も約94%(2026年6月推計)に達し、処方箋を受け取る側の受け皿はほぼ整っています。
残るは発行する側で、医療機関の導入は約1割にとどまっています。国が補助金や診療報酬で後押ししているのがまさにここです。
私個人の意見としては、今導入してしまうほうがいいのではないかと考えます。
導入をためらうクリニックからよく聞くのが「近隣の大きな病院がまだ対応していないから」という理由です。ですがこれは、大病院の電子カルテシステムは既製品ではなくオーダーメイドで作られていることがほとんどであるためです。電子処方箋に対応するための改修に時間がかかっているだけというケースが多く、いずれ準備が整えば運用を始めることが予想されますし、導入率も徐々に伸びていくことでしょう。
周囲の大病院やクリニックが始めてから決断となると、その頃には導入依頼が事業者に集中し、十分なフォローを受けられないことも考えられます。
処方箋の発行パターンもいくつかあったり、運用を始めると結構戸惑います。電子処方箋の運用をマニュアルだけで理解するのはなかなか困難だと思います。スタッフの操作の習熟、周辺薬局との連携、患者さんへの案内——こうした運用への「慣れ」には時間がかかりますし、ベンダーのフォローが欠かせません。補助金や締切とは別に、今のうちからベンダーのフォローを受けながら少しずつ「慣れておく」「現場に浸透させておく」ことにも意味があります。
今後の医療DXの流れを考えれば、「導入するかどうか」より「いつ導入するか」の問題になりつつあるというのが現場を見ていての感想です。
※電子処方箋そのものの仕組みやメリット・導入手順については、別の記事で詳しく解説する予定です。
なお、オンライン資格確認の補助金や機器の期限については、顔認証付きカードリーダーの保守期限の記事でも解説しています。
厚労省のオンライン説明会(アーカイブ)
2026年7月14日に、厚生労働省が電子処方箋のオンライン説明会(YouTubeライブ)を開催しました。補助金や診療報酬改定だけでなく、導入手順、見積もりのチェックポイント、費用を抑えるコツまで扱っており、導入を検討している施設には参考になる内容です。アーカイブ動画が公開されていますので一度ご覧ください。
説明会当日の資料や最新情報は、
厚生労働省電子処方箋の運用開始や導入準備に関するオンライン説明会
に掲載されています。
まとめ
- 補助の条件は令和8年9月末までの導入完了
- 補助上限は診療所27.1万円・薬局27.7万円など(院内処方機能まで含めると増額)
- 薬局は今回が最後の補助と国が明言。未導入薬局は最後の機会
- 医科の10月以降の補助は「改めて検討」。今の条件が続く保証はない
- 令和8年度診療報酬改定で、導入後は加算でも継続的に評価される(医科・歯科・薬局とも)
- ベンダーの改修対応や事前準備などのリードタイムを考えると今すぐ動くべき
- HPKIカード待ちの間も段階的に運用開始できる

まずはお使いのレセコン・電子カルテベンダーに「9月末までに電子処方箋を導入したい場合、いつまでに発注が必要か」を確認するところから始めてみてください。


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