訪問診療等・オンライン診療等・外来診療等(通常とは異なる動線・機器故障時等)におけるオンライン資格確認等の導入に対し補助金が用意されているのはご存知でしょうか?
(公式には「助成金」ですが、本記事では「補助金」と表記します。)
「うちは訪問診療もオンライン診療もやっていないから関係ない」——そう思って読み飛ばしている方も、実はこの補助金はほぼ全ての施設で活用できるものですので、きちんと内容を把握しておくことをおすすめします。
「そもそも何の補助金なの?」という方のために少し整理します。
何に対する補助金?
今現在、医療機関の窓口にはマイナンバーカードを読み取るための顔認証付きカードリーダーが置いてあります。これに患者さんがマイナンバーカードを通すことで、本人確認や保険情報の照会を行っているわけですが、このカードリーダーは据え置き型で気軽に設置場所を変えたりはできません。
通常の外来のみであれば大きな問題ではないのですが、例えば訪問診療やオンライン診療など、患者さんが受付に来ない場合の保険情報の確認は困難になります。
そういった場合に、スマホやタブレット等のモバイル端末を、臨時のカードリーダーとして活用してオンライン資格確認を行う仕組みがあります。別記事:マイナ資格確認アプリとは? 障害時の備え
今回紹介する補助金は、こうした通常外来とは異なる場面でのオンライン資格確認に対応するための整備費用(レセコン改修等)に充てることができるものです。対象は3つの区分に分かれています。
- 訪問診療
- オンライン診療
- 外来診療等(通常とは異なる動線・機器故障時等)
ポイントは「機器故障時等の備え」で申請できる区分があるという点です。
受付に設置してある顔認証付きカードリーダー故障時や通信障害時のバックアップ対策として、スマホやタブレット等のモバイル端末でもマイナンバーカードを使った資格確認ができます。そして、その設備導入のための費用にこの補助金が活用できるのです。
しかもレセコンの改修費だけではなく、スマホやタブレットの購入費も対象です。
「機器故障時の備え」はほぼ全医療機関が対象
補助金には3つの区分がありますが、多くの方に当てはまるのが「外来診療等(通常とは異なる動線・機器故障時等)」です。
具体的にどんな場面かというと
- 発熱外来対応
- 入院(病室)対応
- ドライブスルー対応
- 機器故障時等対応
訪問診療やオンライン診療は実施していない、発熱外来もドライブスルーもやっていない、そんな一般的な診療所・薬局でも、「カードリーダーが故障したときに備えて」という理由で申請することができます。
受付のカードリーダー故障や通信障害はどの施設でも起こりえますよね。
補助の対象になる費用
- レセプトコンピューターの改修費用:モバイル端末でオンライン資格確認した情報を取り込むために必要な改修
- モバイル端末や汎用カードリーダーの購入費用:スマホ・タブレット、パソコンや汎用カードリーダー
※「汎用カードリーダー」とは、顔認証付きカードリーダーとは別物で、パソコンにつないでマイナンバーカードを読み取るための市販の小型カードリーダーのことです。
マイナンバーカードを直接読み取ることのできるNFC対応スマホであれば、汎用カードリーダーは不要です。
補助額は3区分で異なる
この補助金は3つの事業区分に分かれていて、それぞれ補助額が違います。
| 事業区分 | 病院 | 診療所・薬局 (大型チェーン薬局を除く) | 大型チェーン薬局 |
|---|---|---|---|
| 外来診療等 (通常とは異なる動線・機器故障時等) | 41.1万円 (事業額82.2万円を上限に1/2) | 12.8万円 (事業額17.1万円を上限に3/4) | 8.5万円 (事業額17.1万円を上限に1/2) |
| 訪問診療等 (訪問診療・往診・訪問服薬指導等) | 41.1万円 (事業額82.2万円を上限に1/2) | 12.8万円 (事業額17.1万円を上限に3/4) | 8.5万円 (事業額17.1万円を上限に1/2) |
| オンライン診療等 (オンライン診療・オンライン服薬指導) | 39万円 (事業額78.1万円を上限に1/2) | 9.7万円 (事業額13万円を上限に3/4) | 6.5万円 (事業額13万円を上限に1/2) |
診療所の場合を例にすると、「事業額17.1万円を上限にその3/4を補助」なので、17.1万円の買い物をすれば12.8万円が補助され、自己負担は約4.3万円です。
もっと小さい買い物、たとえば10万円のスマホなら、その3/4の7.5万円が補助され、自己負担は約2.5万円。上限を超えた分は全額自己負担になるので、20万円使っても補助は12.8万円までです。
2つ以上の事業に分けて申請する使い方
ここが実務上大事なポイントです。この補助金は各事業区分につき1回ずつ、最大3回まで申請できます(訪問診療等・オンライン診療等・外来診療等で各1回)。
ただし、申請内容や改修範囲が重複していると認められません。つまり内容が明確に分かれていれば複数の事業で申請できます。

たとえば、こんな組み合わせが可能です。
- 訪問診療等:レセコンメーカーのプログラム改修費用で1事業
- 外来診療等:スマホなどモバイル端末の購入費で1事業
このように複数の事業区分で申請するという活用ができます。レセコンの改修費用(オプションソフトの追加など)は使っているメーカーによって対象範囲や金額が異なりますので、まずはベンダーに「必要な改修内容と費用を教えてほしい」と確認してみてください。
複数事業区分で申請可能なことを知っておくことで、制度を最大限に有効活用することができます。
なお、「外来診療等」としての申請は1回のみです。「通常とは異なる動線」と「機器故障時等」で2回申請することはできないので注意してください。
用意したスマホの活用方法
用意したスマホに「マイナ資格確認アプリ」を入れておけば、顔認証付きカードリーダーが故障したときのバックアップ、発熱外来や駐車場での受付、訪問診療への持ち出しなど、資格確認のいろいろな場面で使えます。個人のスマホを業務に使うのは私物と業務の線引きや患者さんの個人情報を扱う点から避けたいところなので、補助金が使えるこのタイミングで業務用の1台を用意しておくのは現実的な備えだと思います。
実際このアプリがどんな場面で使えるのか、導入前に知っておきたい注意点や設定については、別記事のマイナ資格確認アプリとは? 障害時の備えで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
モバイル端末購入時の注意点
- マイナンバーカードを読み取れるNFC対応機種を選ぶ:非対応だとアプリが動かず無駄になります
- 補助対象は端末の購入費のみ:毎月の通信料は対象外です
申請の流れと注意点
申請は導入と支払いを済ませてから行います。
- システムの改修やモバイル端末の導入を完了する
- システムベンダー等から請求書を受け取る
- ベンダー等に費用を精算する
- ベンダーから「領収書」および「領収書内訳書」を受け取る
- 必要書類を添付して、医療機関等向け総合ポータルサイトから申請する
申請期限:令和9年(2027年)2月1日
申請でつまずきやすいポイントも挙げておきます。
- 領収書に「事業区分名」の記載が必要:(訪問診療等)(オンライン診療等)(外来診療等)のうち該当する事業区分を1つ記載してもらいます。記載がない場合や複数書かれている場合、取消になることがあります。ベンダーや購入元に伝えておきましょう
- 領収書内訳書への記載 「一式」はNG:項目ごとの詳細な内訳が必要です。領収書同様にベンダーが作成する書類です
- 書類が全部揃ってから申請する:申請後の追加提出は認められず、不備があると一度取消になって最初からやり直しです
- スマホ購入時に領収書を発行してもらう:これはベンダーでは対応できない範囲ですのでご自身で購入元に領収書発行を依頼しましょう
まとめ
- 「外来診療等」の区分には「機器故障時等対応」があり、ほぼ全施設が対象になりうる
- レセコン改修費に加え、スマホ・タブレットなどの購入費も対象。用意したスマホにマイナ資格確認アプリを入れて故障時のバックアップにする
- 各事業区分ごとに1回ずつ最大3回まで申請可能。内容が重複しなければ「訪問診療等でレセコン改修」、「外来診療等でモバイル端末」といった2事業区分で申請もできる
- 申請期限は令和9年(2027年)2月1日。導入・支払いを済ませてからの申請となる
まずはお使いのレセコン・電子カルテのベンダーに「モバイル端末でオンライン資格確認するための補助金を使いたい。どのような改修が必要でどれぐらい費用がかかるか?」と相談してみてください。
本記事で紹介した制度の詳細や最新の情報は、医療機関等向け総合ポータルサイト KB0010237でご確認ください。
オンライン資格確認関連の補助金は本記事の制度のほかにもあります。それぞれ別制度・別締切なので、対象になりそうなものは早めに確認しておいてください。
- 電子処方箋の補助金:導入完了が令和8年9月末までの条件。薬局は今回が最後の補助
- 医療費助成PMHの補助金:申請期限は2026年9月30日、予算上限で早期終了する可能性あり


